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予定通り明け方に目を覚ます。

明け方と言っても冬だ。
真夜中と暗さも寒さも変わらない。
薄目で、暗くて見えない天井を見上げる。
起きなくては。
でももう少しぼんやりしてから。

シーツから出た頬に触れた空気が冷たくて一度身震いをした。
今日もまた寒い。
寒いからってランニングはサボらない。サボれない。
スタンドで闘えない私はせめて足手まといにならぬよう地道に鍛えるしかないのだ。
一念発起。
そっとシーツを動かさないようベッドの縁まで慎重に移動する。
そこからすべり落ちるように床へと降りた。
もう慣れてしまった行動、
一緒のベッドで眠る相方をなるべく起こさないように。


用意していたランニング用の服を着込む。
髪をゴムでまとめて、ベッドを振り返った。
起きなくても、返事がなくても、出掛けるときは声をかけろ。
スクア一ロが提案した同居のルール。
しゃがんで、スクア一ロのなるべく近くで小声で言った。


「…今日も行ってきますね」

「ん」

もぞっと動いたと思ったら、シーツから左手が出てきて、頬に当てられた。

「…冷えたなティッツァ。」
「君の手はあたたかいな」

細くて案外と長い睫の間から少し青色がこちらをのぞく。

「…今日もさみぃなぁ…」
「ええ、だからもう手をひっこめるのをおすすめします。君も冷えてしまうぞ?」

左手は頬から離れ、かわりにベッドをポンポン、と寝起きの力でかすかに叩いた。



「走り終わったら入ってこいよ」



他人の温度であたためられたベッドは、ひどく魅力的だ。
苦笑がもれる。

「汗臭いから、シャワーのあとなら。」


スクア一ロが口の端を一瞬上げて、目を閉じた。
さあひとっ走りしてくるか、
あたたかいベッドのために。
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