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やるよ/どうせなら飲みかけの方がなんで?/んじゃあ、ほら。またなーえっ…/

竹刀のささくれをみつけ、手入れのために主将である大神に伝え、稽古から一時下がる。
道場には正式な入口の他にもう一ヵ所外に通じる扉がある。剣道部員はそこでエアサロをしたり竹刀を削る。
冬近く肌寒い、と言えど外に通じる扉を開けると熱くなった体には心地よい。面を着けたままだから余計に。正面に礼をして外にでて、さて竹刀を削っていると左から大きな影。
竹刀から目を離しそちらを確認する。
「…よ、加山」
カンナさんだ。
胸元まで開いたシャツに、下はジャージ。高い場所にいて、面を付けてる俺からは危うい位置までバレずによく見える。言わない。役得。
俺の名前を呼んだ後、最近ブームなんだと前に言っていた炭酸を一口煽った。左手にも同じペットボトルを持っている。
「俺は二年ですよ~<先輩>でしょ?」
「何かそんな気しねぇの」
それは酷いお言葉。
「もう帰るんですか?」
「そ。駅前、カレーパン揚がる時間だからな」
さすが。
「今日はそこで大神先輩と合流すんの」
にくい。
「加山」
前触れなく左手のペットボトルが投げられた。慌てて受け取る。面を外していたらよかった、危うく取り損ねかけた。
「誕生日おめでと」
ペットボトルの冷たさが心地いい。
「…覚えててくれたんですか…」
「先輩に聞いた」
「……。どうせなら、飲みかけのくださいよ」
カンナさんがきょとんとする。丸い目が更に丸く。
しまったまた責められるか!言った後で後悔。
「なんで?」
…あれ。
「えっと」
つっこまれると思ってたのに。何だか拍子抜けして、つい口から出任せ。
「じ、つは炭酸ちょっと苦手で。開けてしばらく時間たった方が飲みやすいので」
「ふーん」
きょとんとしたまま、もう片方を投げてきた。受け取って、こっちが慌てる。

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